指定管理者制度AI|指定管理情報を見逃さない4つのプロダクトを展開中ログイン

講座の目次

伝わる提案の原理原則

4

読みやすさ、わかりやすさ

この記事の目次

この章を読み終わるとできること

  • 自分が書いた提案書を七つの観点で見直し、書き直すべき紙面を判定できる

  • 見出し・要約・図表・余白を、飾りではなく審査員の読解負荷を下げる設計として説明できる

  • 点数の低いページについて、何を削り、何を残し、何を見える形に変えるかを修正指示にできる

読ませる工夫がなければ、中身以前に落ちる

提案書を書く側は、どうしても「全部読んでもらえる」という前提に立ちます。時間をかけて調べ、議論し、推敲したのだから、一文ずつ丁寧に追ってもらいたい。けれど、審査する側の時間は、書き手の熱量に合わせて伸びません。

忙しい審査員は、すべてを熟読しません。サマリーを斜め読みして判断することもあります。しかも、読むのは一社分だけではありません。大量の提案書を限られた時間で見比べます。その状況で、冒頭から文字が詰まり、見出しが内容を示さず、結論が段落の末尾に沈んでいたらどうなるか。良い提案でも、良さに到達する前に読み手が疲れます。

これは「審査員がきちんと読んでくれない」という話ではありません。短時間でも評価できる状態に整えて渡すことまでが、提案する側の責任です。

評価の高い事業計画書には共通点があります。

書かれていることが、一瞬で理解できる。

この一瞬は、内容が薄いという意味ではありません。入口が明確だという意味です。見出しを見れば論点が分かる。図表を見れば関係が分かる。要約を読めば結論が分かる。詳しく確かめたいときには、本文へ迷わず降りられる。読み手が内容を探し回らなくてよい紙面です。

上の図で減らしたいのは、文章量そのものではなく「探す・戻る・推測する」です。読みやすさは、情報を削り切ることではなく、必要な情報へ最短距離で届かせることです。

読みやすさは、文章力ではなく設計である

読みやすさを「文章が上手な人だけが持つ才能」にしてはいけません。才能の話にすると、締切直前に「文章が得意な人へ見てもらう」で終わります。直す基準も残りません。

読みやすさは設計です。設計なら、分解して点検できます。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

設計するもの紙面で果たす役割無いと起きること
見出し何について答える区画かを示す本文を読まないと論点が分からない
冒頭の要約結論と全体像を先に渡す最後まで読まないと答えが出ない
図表比較・流れ・関係を一目で示す関係を頭の中で組み立てさせる
余白情報の境界と優先順位を示す全要素が同じ強さで迫ってくる
平易な言葉解釈の揺れを減らす専門用語の意味を推測させる
短い文一文一義に近づける条件と結論の対応がぼやける

一つひとつは小さな工夫です。しかし、全部が同じ目的を持っています。**審査員の頭の中で発生する編集作業を、紙面側で先に済ませる。**これが読みやすさの正体です。

「分かりやすい」と「簡単」は違う

情報を減らせば分かりやすくなる、とは限りません。実施時期、担当、費用感、対象、効果の測り方を削れば、文章は短くなります。しかし、実現可能性は読めなくなります。

公共事業の提案では、Who、What、When、Where、Why、Howに加え、How muchが効きます。誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どう行い、どの程度の費用を見込むのか。この要素が見えると、予算感と実現可能性を把握しやすくなります。反対に「地域と連携して魅力ある事業を積極的に展開します」だけでは、文は短くても中身が見えません。

短さを競うのではありません。必要な情報を残しながら、読み手に組み立てさせないことが勝負です。

左は説明不足、右は理解の順路です。目指すのは語数の少なさではなく、審査員が迷わず評価判断まで進める状態です。

見出し・要約・図表・余白は、読む順番をつくる

見出しはラベルではなく、答えの予告である

「取り組みについて」「基本的な考え方」「今後の方針」。こうした見出しは、何かが書いてあることしか伝えません。見出しだけを追っても、提案の筋は見えないままです。

見出しには、その区画で何を答えるのかを背負わせます。たとえば「地域連携」よりも、「地域団体との定例協議で利用ニーズを運営へ反映」のほうが、本文へ入る前に主張が見えます。見出しだけで全情報を言い切る必要はありません。ただし、見出しを縦に読んだとき、提案の骨格が追えなければ弱い。

見出しの役割は、格好をつけることではありません。

  • 今どの論点を読んでいるかを知らせる

  • この区画の結論を予告する

  • 詳しく読みたい箇所へ戻れる目印になる

  • 審査項目と提案内容の対応を見つけやすくする

審査員は、最初から最後まで同じ速度で読みません。見出しを拾い、関心のある箇所で止まり、根拠を確かめ、別の箇所へ移ります。見出しは、その移動を支える道路標識です。

要約は本文の代用品ではなく、入口である

要約を置くと本文を読まれなくなる、と心配する必要はありません。入口が無い本文ほど、そもそも深く読まれません。

良い要約は、次の問いに短く答えます。

問い要約で先に渡すもの
何を変えるのか提案の結論
なぜ必要か解決する課題
どう実行するのか施策の骨格
何で確かめるのか効果の見方

要約で結論をつかみ、本文で実行条件と根拠を確かめる。この二段構えがあると、斜め読みでも筋を失いません。要約が本文と違うことを言っていたり、要約にだけ魅力的な言葉があり本文に根拠がなかったりすると、逆に信頼を落とします。入口と中身は、同じ方向を向いていなければなりません。

図表は、文章を飾るために置かない

図表や写真、CGは、一読で全体像をつかませ、認知負荷を下げます。感情に訴え、提案への信頼感を支える力もあります。しかし、入れれば入れるほど伝わるわけではありません。

図表に変える価値があるのは、文章のままでは読み手が頭の中で並べ直さなければならない情報です。

情報の形向いている見せ方
複数案の違い比較表
実施の順番フロー図・工程図
関係者の役割関係図・役割表
課題から効果までのつながり因果の流れ
全体に対する位置づけ構成図

図表の直前と直後には、読み取り方が要ります。「何を見る図か」「どの差が重要か」が無い図表は、審査員に解釈を委ねます。見栄えは良くても、評価には結び付きません。

3DCG、ドローン、生成AIによるイメージパース、4コマ漫画、ショートムービー。表現の選択肢は増えています。だからこそ先に問うべきは、「そのビジュアルで、文章だけでは伝わりにくい何が見えるのか」です。答えが無ければ、置かないほうが強い。

余白は空きではなく、情報の境界である

紙面に空きがあると、不安になって文字や画像を足したくなります。しかし、余白は未使用領域ではありません。見出しと本文、主張と根拠、図と注釈の境界を示す働きがあります。

余白が無い紙面では、すべての情報が同時に話しかけてきます。どこから見ればよいか分かりません。重要箇所を太字にしても、周囲も太字なら差が消えます。色を増やしても、全部が目立てば何も目立ちません。

優先順位は、強調を足すだけでなく、周りを静かにすることで生まれます。

余白を見るときは、面積だけを測らなくて構いません。次の境界が目で分かれるかを見ます。

  • 一つの論点がどこで始まり、どこで終わるか

  • 結論と根拠がどのまとまりに属するか

  • 図表と、その説明がどこで対応するか

  • 注記と本文の重要度がどう違うか

専門用語は、知識を示すために使わない

専門用語を多く使うと、詳しく見えることがあります。しかし、意味の確認に時間を使わせた瞬間、提案の内容から注意が離れます。

必要な専門用語は使って構いません。公共施設の運営を正確に述べるには、置き換えられない語もあります。ただし、初出で短く説明する、平易な言い換えを添える、同じ概念を別の呼び名で揺らさない。この三つで読解の停止を防ぎます。

専門用語を知っていることより、審査員が誤解なく読めることのほうが重要です。「分かる人には分かる」は、提案書では逃げです。

読みにくい紙面は、こうして中身を殺す

次は、可読性だけを見るために作った架空の比較例です。実在案件の提案文ではありません。

悪い例:熱意はあるが、評価する場所が見つからない

当施設のさらなる活性化を図るため、地域の皆様をはじめとする多様な主体との連携を積極的かつ継続的に推進するとともに、これまで蓄積してきた運営ノウハウを最大限活用し、利用者ニーズを踏まえた魅力的な事業を柔軟に展開することで、施設の設置目的の達成とサービス水準の向上に努めます。

この文には、悪いことは書いてありません。だから危険です。地域連携、運営ノウハウ、利用者ニーズ、設置目的、サービス向上。評価されそうな語が一文に詰まっています。しかし、誰が何をいつ行うのか、どの結果を見れば実行できたと判断できるのかは見えません。

問題は五つあります。

  1. 結論が一つに絞られていない

  2. 一文の中に複数の施策と目的が入っている

  3. 抽象語が続き、実施像を描けない

  4. 見出しにできる主張が本文へ埋まっている

  5. 効果を確かめる情報が無い

修正指示:文章を磨く前に、情報の役割を分ける

いきなり言い換えません。まず、文の中身を「結論」「実行」「反映」「目指す状態」に分けます。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

役割悪い例から拾える内容修正で必要なこと
結論地域と連携して運営する見出しへ上げる
実行多様な主体と継続的に連携主体と場を見える形にする
反映利用者ニーズを事業へ反映反映までの流れを示す
目指す状態設置目的の達成、サービス向上何を確かめるかを添える

この分解だけで、修正の方向が決まります。言葉を美しくする作業ではありません。審査員が採点できる単位へ、情報を並べ直す作業です。

良い例:見出しだけで主張が分かり、本文で確かめられる

地域との定例協議で、利用ニーズを運営へ反映

地域団体と定期的に協議し、把握した利用ニーズを事業の見直しへつなげます。協議で出た意見、対応方針、反映結果を記録し、次の協議で共有します。

架空例なので、頻度や担当、評価指標は置いていません。実案件では公募資料と自社の実施体制に基づいて補う必要があります。それでも、悪い例との差ははっきりしています。見出しで結論が分かる。本文には「協議→方針→反映→共有」の流れがある。審査員は、どこを確かめればよいか見失いません。

読み取り方は一つです。悪い例は読み手に編集させ、良い例は編集済みの順路を渡しています。中身を増やす前に、主張の置き場所を変えるだけでも可読性は上がります。

公開された提案書は、表現の教科書になる。ただし丸写しはしない

指定管理やPFIなどの事業提案書は、自治体のWebサイトで公開されているものがあります。勝ち抜いた計画書の見出し、構成、図表の置き方を観察できる貴重な材料です。

見るべきなのは、文章の表面ではありません。

  • 見出しだけでどこまで筋が追えるか

  • 要約から本文へどう降りるか

  • 何を表にし、何を文章に残しているか

  • 図表の前後で何を説明しているか

  • 余白によってどの情報を一番強く見せているか

丸パクリは厳禁です。すぐに分かりますし、そんな勝ち方をしても事業開始後に困るだけです。他社の提案は、その会社の体制、経験、地域理解に支えられています。外形だけ借りても、自社が実行できる提案にはなりません。借りるのは内容ではなく、伝達設計を観察する視点です。

10分で追える紙面には、三つの読み方がある

「10分で読める」は、10分で全ページを精読できるという約束ではありません。審査員が短時間で次の三つを行える状態を指します。

読み方追うもの確認できること
骨格読み見出し・強調・図表のタイトル提案全体の主張と順序
要点読み要約・段落冒頭・図表各主張の結論と関係
根拠読み本文・注記・出典実施条件と裏付け

骨格読みで筋が見えなければ、要点読みへ進む場所を選べません。要点読みで結論が見えなければ、根拠を確かめる場所も分かりません。三つは別々ではなく、上から下へ降りる階段です。

この図は、速読を求めるものではありません。紙面が複数の読み方を許し、短時間でも全体像から根拠へ迷わず移れるかを見るものです。

見た目が整っていても、読みにくい紙面はある

テンプレートに沿い、色が統一され、きれいな図が並んでいる。それでも筋が追えないことがあります。原因は、デザインの品質と情報の優先順位が別だからです。

次の状態は要注意です。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

状態見た目読解で起きること
全見出しが同じ抽象度統一感があるどこに何があるか分からない
全要素が強調されているにぎやか優先順位が消える
図表が多い充実して見える図同士の関係を推測させる
要約が長い丁寧に見える本文との役割が重なる
専門用語が多い詳しく見える意味の確認で読む流れが止まる

「プロらしい見た目」と「短時間で判断できる紙面」を混同しないことです。3DCGや生成AIで作った図も同じです。何を理解させるかが曖昧なら、高品質な装飾にすぎません。

最後に勝敗を分けるのは、文章で伝える力

文字からビジュアルへ、コミュニケーション手段は変化しています。図表や写真、CGを使うことは、もう特別ではありません。それでも、事業計画書の基礎は文章です。

図は関係を見せられます。写真は現場像を伝えられます。CGは完成イメージを描けます。しかし、なぜその施策が必要なのか、誰が責任を持つのか、どの条件で実施するのか、何をもって効果とするのかは、結局言葉で確定させます。

ビジュアルで曖昧な文章を隠してはいけません。**ビジュアルで全体像をつかませ、文章で論理と実行条件を確定する。**この役割分担が強い紙面をつくります。

平易な表現、一つの文を短くすること、タイトルと小見出しで流れをつくること、句読点を的確に置くこと、ひらがなを増やして硬さを和らげること、文体を揃えること。どれも派手ではありません。しかし、最新の表現手段を使うほど、こうした基礎が効きます。

3行まとめ

  1. 審査員は大量の提案書を短時間で読みます。内容へ到達してもらうための順路までが提案です。

  2. 見出し・要約・図表・余白は飾りではなく、探す・戻る・推測する負荷を減らす設計です。

  3. 七つの観点を自分の原稿へ当て、感想を「移す・分ける・削る・表にする」という修正指示へ変えてください。

読みやすさは、最後に化粧を施す工程ではありません。良い中身を、良い中身のまま審査員へ届けるための設計です。次に開く原稿の見出しだけを縦に読み、3行で筋を言えるか。そこから採点を始めてください。

本章の比較例は、可読性の判断方法を示すための架空例です。自案件では、公募資料の指定書式と自社の提案内容に合わせてください。章ごとの具体的な書き方はC3、実案件の提案書と実数値はC5で扱います。

この章の学習を終えたら