はじめに — この講座で何が手に入るか
この記事の目次
この章を読み終わるとできること
C1で制度と公募の地図を得たあと、提案書を書く前に何を判断できるようになるべきかを言える
現在公開している8章から、自分の状況に合う章を選び、読む順と所要時間を決められる
「原則」と「勝負どころ」を区別し、提案書の準備状況に合わせて次に使うツールを選べる
読み終えたあと、章別の書き方を扱うC3へ進む条件を判定できる
所要は20分です。ここで読む順を決めてから、必要な章へ進んでください。
C2は何のためにあるか
C1で手に入るのは、指定管理者制度の用語、手続き、お金、登場人物を見渡すための地図です。その地図があれば、募集要項を開いたときに「何が書かれているか」は追えるようになります。
しかし、制度が分かることと、評価される提案書を考えられることの間には、もう一段の壁があります。
募集要項に「利用促進」と書いてある。仕様書に要求水準が並んでいる。自社には実績も企画もある。それでも、次の問いには地図だけでは答えられません。
自治体は、なぜ今回その要求を置いたのか
要求水準を守るだけでなく、どこを上積みすべきか
課題、施策、効果は一本の因果でつながっているか
良い中身が、審査員に短時間で届く紙面になっているか
項目ごとの答えが、提案全体で同じ未来を向いているか
自社の説明が、利用者に届く便益まで降りているか
その提案に、現場で得た事実と自社にしかない実物があるか
C2が扱うのは、これらを判断するための評価される提案書の思想です。対象は、提案書をこれから書く人です。文章を書き始める前に、何を読み、何を選び、何を疑うか。その上流の判断を八つの道具に変えます。
図の中央がC2の担当です。理念、収支、人員配置の書式へ落とす前に、提案全体を貫く判断基準を揃えます。
ここでは、理念・収支・人員配置を章ごとにどう書くかには踏み込みません。それはC3の担当です。AIツールの操作やプロンプトの型はC4、提案書を一本完成させる工程はC10で扱います。
各章で得られる知識
現在公開しているのは、第1〜7章と第9章の8章です。第1〜6章で六つの原則を揃え、第7章と第9章で、紙面だけでは作れない勝負どころを押さえます。
| 章 | タイトル | 分かるようになること |
|---|---|---|
| 1 | 行政の意図を理解せよ | 募集要項の要求からすぐ施策へ飛ばず、自治体計画・議会議事録・現況資料で行政課題の仮説を裏取りする方法。行政課題、得たい未来、自社の強みが交わる「提案の芯」 |
| 2 | 要求水準を飛び越えろ | 要求水準が最低ラインであることと、新しさ・独自性・具体性・実現性で上積みを選ぶ基準。上積みしない項目を決める必要性 |
| 3 | ロジック!ロジック!ロジック! | 一施策を課題→施策→効果へ分解し、課題なし・効果なし・根拠なし・対応ずれ・途中の飛躍という因果の穴を見つける方法 |
| 4 | 読みやすさ・わかりやすさが命 | 見出し・要約・図表・余白を、装飾ではなく読解負荷を下げる設計として使う考え方。審査員が10分で筋を追える紙面の条件 |
| 5 | ストーリー性で差をつけろ — 提案全体を1本の筋で貫く | 「この施設を、誰にとって、どんな場所にするか」を1行にし、各章を結ぶ方法。ストーリーは感動させる作文ではなく、選択を揃える通し筋であること |
| 6 | やさしさが勝つ — 共感型プランニング | 自社の実績・体制・効率を主語にした文を、利用者の場面・便益・安心へ転換する方法。やわらかい文章と、やさしい提案の違い |
| 7 | 現場に行け — 人間関係で勝つ | 動線・利用者層・設備の傷み・スタッフの動きを観察し、観察・発言・解釈を混ぜずに記録する方法。現地情報を提案の根拠へ変える条件 |
| 9 | AI時代に何で差がつくか — きれいな提案書の先にある勝ち筋 | AIで代替できる平均点と、自社にしかない差を分ける方法。一次情報・現場の実績・固有のアイデア・実装体制・熱量を確かめられる実物へ変える考え方 |
六つの原則は順番に積み上がります。第1章で「何に答えるか」を決め、第2章で「どこまで答えるか」を選び、第3章で因果を通します。第4章で届く形にし、第5章で全体を一本に結び、第6章で相手に届く意味へ変えます。
第7章と第9章は、その六原則だけでは競合と並んだときに残らない差を扱います。現場の一次情報と、自社が実際に持つ証拠です。
各章で紹介するツール
C2は、現在公開している8章すべてに、自分の資料や原稿へ当てるツールがあります。名称は各章のfrontmatterと実際のツール節から転記しています。
| 章 | タイトル | ツール名 |
|---|---|---|
| 1 | 行政の意図を理解せよ | 募集の裏にある行政課題を読み取る — 出題意図の逆算シート(7問) |
| 2 | 要求水準を飛び越えろ | 仕様書遵守と上積みの線を引く — 上積み提案の判断表 |
| 3 | ロジック!ロジック!ロジック! | 自分の原稿の因果の穴を見つける — 課題→施策→効果の点検シート |
| 4 | 読みやすさ・わかりやすさが命 | 審査員が10分で読める紙面か採点する — 可読性の採点表(7観点・14点満点) |
| 5 | ストーリー性で差をつけろ — 提案全体を1本の筋で貫く | 提案全体を1本の筋で貫く — 通し筋の設計シート |
| 6 | やさしさが勝つ — 共感型プランニング | 自社目線を利用者目線に書き換える — 主語の転換チェック(5つの型) |
| 7 | 現場に行け — 人間関係で勝つ | 現地で取るべき情報を漏らさない — 現地調査の持ち帰りリスト |
| 9 | AI時代に何で差がつくか — きれいな提案書の先にある勝ち筋 | AI時代の勝ち筋を決める — 差別化要因の棚卸し表 |
どのツールにも、記入済みサンプルと空欄テンプレートがあります。まずサンプルで判定の粒度をつかみ、次に自分の募集資料、原稿、現地メモへ当ててください。
ツールは提案書を自動で作るための型ではありません。「なぜこの判断にしたか」を残すための道具です。空欄が出たら文章で埋めず、足りない資料、観察、証拠を取りに戻ります。
読むべき人/まだ先でよい人
時間を使う前に、対象をはっきり分けます。
| 状態 | |
|---|---|
| 読むべき | C1を終え、次の公募で初めて提案書を書く |
| 読むべき | 提案書を書いた経験はあるが、過去原稿の踏襲から抜けられない |
| 読むべき | 社内の複数担当が書いた原稿を、一つの判断基準でレビューしたい |
| 読むべき | 新人へ「何を書け」ではなく「なぜそう判断するか」を教えたい |
| 読むべき | AIで文章は整うようになったが、自社らしい差が薄い |
| まだ先でよい | 指定管理者制度、募集要項、公募の流れが分からない(先にC1) |
| まだ先でよい | 原則は説明でき、理念・収支・人員配置の具体的な書き方だけが必要(C3へ) |
| まだ先でよい | AIツールの操作方法やプロンプトの組み方を知りたい(C4へ) |
| まだ先でよい | 提案書を一本完成させる工程をすぐ回したい(C10へ) |
判断がつかなければ、次の六問に答えてください。
Q1 要求を見たとき、施策より先に「なぜ必要か」を問えますか
Q2 要求水準のうち、上積みしない項目を理由付きで選べますか
Q3 一施策を「課題→施策→効果」の一行にできますか
Q4 原稿の見出しだけを読み、主張を3行で説明できますか
Q5 提案全体を「誰に、どんな変化を届けるか」の1行にできますか
Q6 自社の強みについて、競合が代替できない実物を示せますか
6問すべてに根拠付きで答えられる → C3へ進む準備ができています
1問でも詰まる → 対応する章から始めてください
対応:Q1=第1章 / Q2=第2章 / Q3=第3章
Q4=第4章 / Q5=第5・6章 / Q6=第7・9章学習ロードマップ — どの章をどこまで読むか
現在公開している8章は、通しで7時間40分です。これは各章のfrontmatterにある読了とワークの所要を合計した実測値です。
第1〜7章:各55分
第9章:75分
合計:55分×7章+75分=460分=7時間40分
六原則の第1〜6章は5時間30分です。最初の提案書を書くなら、ここを一組として読んでください。第7章は現地へ行く前、第9章は自社の差を決めるときに加えます。
| 章 | タイトル | 所要 | 種類 | 必読度 | 飛ばしてよい条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 行政の意図を理解せよ | 55分 | 原則 | ◎必読 | 行政課題を複数の公開資料で裏取りし、提案の芯を一文にできる |
| 2 | 要求水準を飛び越えろ | 55分 | 原則 | ◎必読 | 要求項目ごとに「遵守・上積み・上積みしない」を理由付きで判定できる |
| 3 | ロジック!ロジック!ロジック! | 55分 | 原則 | ◎必読 | 自分の原稿を課題→施策→効果へ分解し、因果の穴を指摘できる |
| 4 | 読みやすさ・わかりやすさが命 | 55分 | 原則 | ◎必読 | 第三者が見出しだけで主張を追え、可読性を同じ基準で採点できる |
| 5 | ストーリー性で差をつけろ — 提案全体を1本の筋で貫く | 55分 | 原則 | ◎必読 | 提案の通し筋を一文にし、各章との接続を説明できる |
| 6 | やさしさが勝つ — 共感型プランニング | 55分 | 原則 | ◎必読 | 自社を主語にした説明を、利用者の場面・便益・安心へ書き換えられる |
| 7 | 現場に行け — 人間関係で勝つ | 55分 | 勝負どころ | ○ | 現地調査済みで、観察・発言・解釈を分けた記録が手元にある |
| 9 | AI時代に何で差がつくか — きれいな提案書の先にある勝ち筋 | 75分 | 勝負どころ | ○ | 自社の強みを代替可能性・実物・案件との接続・実装体制で棚卸し済み |
必読の六原則は、どれか一つが他を代替する関係ではありません。行政の意図を読めても論理が切れていれば届かず、論理が通っていても利用者への意味が無ければ自社都合に見えます。読みやすくても、全体の筋がばらばらなら記憶に残りません。
上段から右へ進み、第4章から下段を左へ戻ると六原則が一周します。その下に、原則を自案件だけの提案へ変える二つの勝負どころがあります。
立場別の読む順
第1章から順に読むのが基本です。ただし、締切、教育、レビューなど目的が明確なら、次の順路から始められます。
同じ内容を表で見る(コピー・検索用)
| あなたの状況 | 読む順 | 所要 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 来月の公募に出す。まだ原稿を書いていない | 1 → 2 → 3 → 5 → 6 → 4 → 7 → 9 | 7時間40分 | 出題意図と上積みを決め、因果と通し筋を作ってから、共感・可読性・現場・固有性で仕上げる |
| 締切が近く、原稿はすでにある | 3 → 4 → 5 → 6 | 3時間40分 | 因果の穴、読解負荷、全体の筋、主語のずれを既存原稿へ直接当てる |
| 新人に教える立場 | 1 → 2 → 3 → 6 → 5 → 4 ののち 7 | 6時間25分 | 何に答えるかから始め、論理と相手目線を先に教え、統合と紙面へ進む。現地調査を演習にする |
| 提案チームのレビュー基準を揃えたい | 3 → 4 → 5 → 1 | 3時間40分 | 一施策、1ページ、全体、出題意図の順に、レビュー対象を広げる |
| 過去原稿の踏襲から抜けたい | 1 → 5 → 6 → 2 | 3時間40分 | 今回の行政課題へ戻り、通し筋と利用者目線を決めたうえで、過去施策の上積み価値を判定する |
| 現地調査を来週に控えている | 7 → 1 → 5 | 2時間45分 | 持ち帰る情報を先に決め、行政課題の仮説と提案の通し筋へ接続する |
| AIで整うが、どの提案も似てしまう | 9 → 7 → 1 → 2 | 4時間 | 平均点と固有の差を分け、現場の事実、行政課題、上積みへ戻る |
| C3へ進めるか判定したい | 1〜6のツールを再点検 | 5時間30分 | 六つの成果物が自案件で埋まれば、章別の実装へ進む前提が揃う |
来月の公募に出す順路が全8章なのは、原稿を書く前なら省略の代償が大きいからです。時間が足りない場合も、章を丸ごと読む代わりに、各章の記入済みサンプルと空欄テンプレートだけは確認してください。
読み方の作法
1. 募集資料と自分の原稿を手元に置く
第1・2章は募集要項と仕様書、第3〜6章は自分が書いた原稿、第7章は現地メモ、第9章は自社の実績資料や記録を使います。まだ原稿が無ければ、過去の提案書を練習対象にできます。
2. ツールの空欄を、うまい文章で埋めない
資料名、ページ、観察した事実、実績記録、担当する役割が書けない欄は、根拠不足です。空欄を残し、何を探すかを書いてください。もっともらしい表現で埋めると、提案の弱点が見えなくなります。
3. 六つの成果物を同じ案件でつなぐ
同じ内容を表で見る(コピー・検索用)
| 順 | 前の章から持ち込むもの | 次の章で決めること |
|---|---|---|
| 1→2 | 行政課題と提案の芯 | どの要求を、どこまで上積みするか |
| 2→3 | 採用した上積み案 | 課題・施策・効果の因果が通るか |
| 3→4 | 因果を通した原稿 | 審査員が短時間で追えるか |
| 4→5 | 読む順が見える各章 | 全章が同じ施設像へつながるか |
| 5→6 | 提案の通し筋 | 利用者・スタッフ・行政・環境へ何が届くか |
別々の架空例で終えるより、同じ案件へ順に当てる方が、判断の食い違いを発見できます。ただし、提案書を一本完成させる制作工程そのものはC10で扱います。
読み終わったあと、どこへ進むか
六原則を自案件へ当て、次の六つが手元にあれば、C3へ進む準備ができています。
[ ] 出題意図の逆算シートで、提案の芯が一文になっている
[ ] 上積み提案の判断表で、上積みする項目としない項目が分かれている
[ ] 課題→施策→効果の点検シートで、因果の穴が処理されている
[ ] 可読性の採点表で、0点の観点が処理されている
[ ] 通し筋の設計シートで、各章と施設像がつながっている
[ ] 主語の転換チェックで、利用者に届く便益が書かれている
6つが埋まった → C3 事業計画書へ
空欄が残っている → 対応するC2の章へ戻るC3では、ここで決めた原則を、理念、事業、収支、人員配置などの章別の書き方へ落とします。C2で「なぜそう書くのか」を決め、C3で「各章をどう書くのか」へ進む。この順なら、書式を埋めることが目的になりません。
AIの操作やプロンプト設計を先に身につけたい場合はC4へ進みます。公募資料から完成稿まで一本の制作工程を回す必要がある場合はC10です。ただし、C2で作った判断基準は置いていかないでください。道具が文章を整えても、何に答え、何を約束するかは原則からしか決まりません。
この章で紹介するツール
持ち帰るのは、読む順を決める — 学習ロードマップ(公開8章の必読度・所要・原則/勝負どころの別)+立場別の順路です。上のロードマップから、自分用の一行を作ってください。
| 決めること | 記入欄 |
|---|---|
| 現在の状況 | ________________ |
| 最初に解く問題 | ________________ |
| 読む順 | 第__章 → 第__章 → 第__章 → 第__章 |
| 合計所要 | __時間__分 |
| 手元に用意する資料 | ________________ |
| 最初に完成させるツール | ________________ |
| C3へ進む判定日 | __年__月__日 |
記入例:
| 決めること | 記入例 |
|---|---|
| 現在の状況 | 締切が近く、原稿はすでにある |
| 最初に解く問題 | 担当者ごとに書いた原稿の筋がばらばら |
| 読む順 | 第3章 → 第4章 → 第5章 → 第6章 |
| 合計所要 | 3時間40分 |
| 手元に用意する資料 | 最新原稿、募集要項、仕様書 |
| 最初に完成させるツール | 課題→施策→効果の点検シート |
| C3へ進む判定日 | __年__月__日 |
順路は予定表ではなく、最初の成果物を決める道具です。「第3章を読む」で終わらず、「点検シートを一枚埋める」まで書いてください。
ワーク(実践課題)
「立場別の読む順」から自分に最も近い行を一つ選び、学習ロードマップへ章番号と合計所要を書く(章番号が3つ以上並び、各章の所要の合計と一致していれば完了)
選んだ順路の最初の章で使う資料を一つ手元に用意し、ファイル名または資料名を学習ロードマップへ書く(募集資料・自分の原稿・現地メモ・自社記録のいずれかが実名で一つ書けていれば完了)
最初に完成させるツール名と、C3へ進む判定日を記入する(ツール名が公開8章のいずれかと一致し、年月日が入っていれば完了)
Q1〜Q6へ「根拠付きで答えられる/詰まる」の印を付け、詰まった問を読む順へ反映する(6問すべてに印が付き、詰まった問に対応する章が順路へ一つ以上入っていれば完了)
3行まとめ
C1の地図を得た次は、提案書を書く前に何に答え、何を選び、何を疑うかという原則を揃えます。
現在公開しているのは8章です。第1〜6章の六原則を土台に、第7章の現場と第9章の固有性を勝負どころとして重ねます。
六つのツールを自案件で埋めたら、C3へ進み、理念・事業・収支・人員配置などの章別の書き方へ落としてください。