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講座の目次

指定管理・PPP/PFIのきほん

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つくる手法 — PFI・DBO・SPCの正体

この記事の目次

この章を読み終わるとできること

  • PFIとDBOを「資金を誰が用意するか」で一言で言い分けられる

  • SPCの登場人物とお金の流れを、白紙に自分で描いて説明できる(6つの箱と5本の矢印に名前を付けられる)

  • 運営を担う会社がPFI事業に入る道筋——構成員として出資して入るのか、協力企業として運営を受託して入るのか——を、契約とお金の向きから説明できる

  • 性能発注・財政平準化という言葉が、どういう仕組みを指しているのかを自分の言葉で言い直せる

施設を「つくる」側のしくみ

「活かす側」志望の人ほど、先に「つくる側」を見てほしい

第2章では、PPP/PFIという「森」の全体像を、3つのエリアに分けて地図化しました。①新しい施設を「つくる」、②今ある施設を「活かす」、③地域の課題を「解決する」。この3つです。

ここで訪ねるのは、エリア①の新しい施設を「つくる」手法です。

「自分は指定管理(=②活かす側)志望なのに、なんで"つくる側"から学ぶの?」——鋭い疑問です。そして、ここには大事な理由があります。

"つくる側"の仕組みを知ると、"活かす側"である自分の立ち位置が、くっきり見えてくるんです。PFIの考え方——性能発注、長期契約、官民のリスク分担——は、実は指定管理にも形を変えて流れ込んでいます。森の入口にある大きな木を知ることは、遠回りに見えて、いちばんの近道なんです。

先に結論を言います。新しい施設をつくるPPP/PFI手法の主役は、やはりPFIです。そして、その本質はたった一言で表せます。

「設計から建設、運営、維持管理まで、まとめて・長期で、民間に任せる」

従来のやり方では、設計は設計会社、建設は建設会社、運営は別の事業者……と、バラバラに発注していました。PFIは、これをひとまとめにして、20年・25年といった長期契約で民間に委ねる

なぜ、まとめて長期で任せると良いのか。その答えの中に、性能発注、財政平準化、SPCといったキーワードが詰まっています。順に解きほぐしていきましょう。

なぜ自治体は「作り方」を指定しないのか——性能発注の正体

従来の公共発注は、仕様発注。自治体が「この材料で、この工法で、この寸法で作りなさい」と、作り方を細かく指定する方式でした。民間は、言われたとおりに作るだけ。

一方、PFIで使われるのは性能発注。自治体は「こういう機能・サービス水準を満たしてほしい」とゴールだけを示し、そこにどう到達するかは民間に委ねる

たとえば図書館なら、「年間◯万人が快適に利用でき、こういうサービスを提供できる施設」というゴールは示すけれど、「その実現方法はあなたの知恵で考えてください」というわけです。

これが、なぜ重要なのか。民間が、自分たちの得意技を最大限に活かせるからです。設計から運営までをまとめて任されるからこそ、「運営しやすいように設計する」「長く使うことを見越して建てる」といった、トータルでの創意工夫が効く。バラバラ発注では絶対に生まれない価値が、ここで生まれます。

現場メモ 性能発注は、民間にとって「自由」であると同時に「責任」でもあります。ゴールへの行き方を任される=結果に対する責任も負う、ということ。

でも、これこそが新規参入者にとってのチャンスです。言われたことをやるだけの下請けではなく、「どう実現するか」を提案できる対等なプレイヤーになれる。第2章で出てきた「あなたの知恵とアイデアで勝負できる」という感覚が、ここにも表れています。

ここで何度も出てくる要求水準書という書類の正体を、先に押さえておきます。要求水準書とは、自治体が「満たしてほしい機能・サービスの水準」だけを書いた書類です。応募のルール(日程・提出物・資格要件)を書いた募集要項とは別冊で出ることが多く、配布資料の一覧に「要求水準書(案)」という名前で並びます。性能発注の案件かどうかは、この1冊があるかどうかで見分けがつきます。

この資料一式のことを、以下では公告と呼びます。自治体が案件を公表するときに出す書類のまとまりだと思ってください。探し方は、PFIとDBOの区別を押さえたあとにまとめて扱います。

公告を開いたとき、その案件がどちら側の発注なのかは、数分で見分けられます。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

見る場所仕様発注ならこう書いてある性能発注ならこう書いてあるあなたの手番
配布資料の名前設計図・仕様書・数量内訳書要求水準書要求水準書があれば「知恵で勝負」の案件
材料・工法の記述材料名・寸法・工法まで指定満たすべき機能・サービス水準まで指定が細かいほど提案の余地は小さい
運営の扱い別契約(登場しない)同じ契約の中に入っている運営が入っていれば、運営専業でも出番がある
評価のされ方価格が中心提案内容と価格の両方提案書に配点があるなら、知恵で差がつく

表の右端が、この見分けの使い道です。要求水準書という言葉が目次にあり、運営が契約の範囲に入っていれば、運営専業の会社にも席がある可能性が出てきます。ただし本当に席があるかどうかは、①運営部分の応募者資格要件(実績・財務・地域要件)、②その業務を代表企業が自グループで内製する前提になっていないか、の2つを見てからです。範囲に入っている=入れる、ではありません。

PFIとDBOの違い——「お金を誰が用意するか」で分かれる

「つくる」エリアには、PFIのほかにDBOという手法もあります。新規参入者がよく混同するので、ここでスッキリ整理しておきましょう。

両者の違いは、ほぼ一点に集約されます。建設のお金を、誰が用意するかです。

  • PFI……民間が資金を調達する。民間がいったんお金を出し、施設を作り、その費用を自治体が長期にわたって分割で支払っていく

  • DBO……資金は自治体が用意する。設計・建設・運営は民間にまとめて任せるが、お金は自治体が調達する。

どちらも「設計・建設・運営をまとめて民間に任せる」点は同じ。違うのは資金の出どころだけ、と覚えてください。

ひとつ、範囲の線を引いておきます。今日扱うのは、**自治体が対価を払うタイプのPFI(サービス購入型)です。民間が出した資金の回収のしかたは案件で分かれていて、自治体が長期の分割で払う型のほかに、利用料金収入で回収する型(独立採算型)や、その混合もあります。運営権ごと民間が持つコンセッションは後者の代表格で、これは第4章で扱います。自分が開いた公告がどの型かは、「事業方式」「対価の支払方法」**の欄で読んでください。

同じ骨格の図を2枚並べます。どの矢印が変わるかだけを見てください。

変わったのは左上と真ん中の2箇所です。左上は、PFIでは金融機関がSPCへ融資し自治体が完成後に長期の分割で払うのに対し、DBOでは自治体が最初に資金を用意します。真ん中は、PFIの「SPC」がDBOでは「民間チーム」になっています。DBOでは借入と契約の主体としてのSPCが必ず要るわけではないので、ここは民間チームと描きました。その案件でSPCの設立を求めるかどうかは、公告の応募者要件で決まります。担い手そのものは変わらず、DBOでも民間が設計・工事・運営を担います。発生しないのは資金調達だけです。

この違いが、それぞれのメリットを生みます。PFIは民間が資金調達する分、次に触れる「財政平準化」の効果が大きい。一方DBOは、自治体が資金を用意するため、民間は資金調達の負担がなく参入しやすい。だから、資金力がまだ大きくない企業にとっては、DBO案件のほうが入口として入りやすい、という見方もできます。ただし入りやすいのは資金調達の面だけです。応募者資格要件(実績・財務)はPFIと同じ水準で課されることが多いので、そこは公告で必ず見てください。

この図で見るのは2点だけです。資金が自治体から民間チームへ向いていることと、民間側に金融機関が出てこないこと。この2点が確認できれば、上のアスキー図と同じことを言っています。

公告はどこから、どの段階で出てくるのか

PFIとDBOの区別がついたところで、その公告がどこから出てくるものなのかを押さえておきます。紙で配られるものではなく、ほぼすべてが自治体サイトからのダウンロードです。そして重要なのは、公告は一度にすべてが出るわけではないという点です。

段階どこから出てくるか何が読めるか
案件名が世に出る内閣府のPFI情報ページ、自治体が公表している公共施設の再編・長寿命化に関する計画施設名・想定手法・おおよその時期
資料一式が置かれる当該自治体サイトの「入札・契約」「事業者募集」ページ配布資料の一覧。ここで要求水準書の有無が見える
資料の段階が分かれる第1段階=実施方針(要求水準書は「(案)」を伴って出ることが多い)/第2段階=募集要項と要求水準書の確定版後ろの段階ほど中身が詳しくなる

段階を見分けることが効いてくるのは、段階によって読める情報の量がまるで違うからです。実施方針だけが出ている段階では、事業期間も配点も「予定」でしか書かれていません。ここを知らずに手法や条件を確定させようとして、書いていないものを探して止まる——この止まり方は実際によく起きています。第1段階の資料しか出ていない案件は、そこが「まだ決まっていない」のではなく「まだ公表されていない」だけだと理解してください。読み取れないこと自体が、いまの案件の状態を表す情報です。

実施方針から募集要項の公表までに数か月あく案件もあります。だから同じ案件を時間差で二度読むことになる——PFIの資料はそういう出方をするもの、と頭に入れておいてください。

PFI最大のメリット「財政平準化」——タイムマシンのような効果

PFIを語るうえで外せないのが、財政平準化というメリットです。少しお金の話になりますが、ここは新規参入者こそ理解しておくと提案力が上がるので、やさしくいきます。

従来の公共工事では、施設を建てるとき、その年に建設費がドカンと一括でかかります。100億円の施設なら、その年の予算から100億円。自治体の財政には、大きな山ができてしまう。

ところがPFIでは、民間がいったん資金を立て替えて施設を作り、自治体はその費用を20年・25年かけて少しずつ分割で支払っていく。すると、財政の負担が長い期間にならされて、ドカンとした山ができない。これが「財政平準化」です。

横軸を年度にして、自治体の支出の形だけを並べるとこうなります。

高さが1年あたりの支出です。総額の大小をこの図で比べてはいけません。見るのは「いつ出ていくか」の形だけです。

この図は、一般財源だけを単純化して並べたものだと思ってください。実務では従来方式でも地方債を使うので、自治体の実負担は償還期間にわたって分かれます。PFIが違うのは、施設整備費だけでなく運営・維持管理費までを含んだ支払いが1本の長期契約になる点です。提案の場で「PFIなら平準化できます」とだけ言うと、財政担当から「起債でも分かれますが」と返ってきます。

財政が苦しい自治体にとって、これは非常に大きい。「今すぐ100億円は出せないけれど、毎年少しずつなら払える」——第1章で扱った"財政のひっ迫"を抱える自治体にとって、PFIが魅力的に映る理由が、ここにあります。

多くの人がつまずく「SPC」の正体

さて、お待たせしました。PPP/PFIを学ぶ人が必ず一度は「?」となる言葉、SPCです。

SPC(Special Purpose Company =特別目的会社)とは、名前のとおりその事業だけのために、特別に作られる会社です。

PFIのような大きな事業では、複数の企業がチームを組んで応募します(このチームを「コンソーシアム」と呼びます)。そして、めでたく選ばれたら、そのチームは事業専用の新しい会社=SPCを設立し、このSPCが自治体と契約を結び、銀行からお金を借り、事業を進めていきます。

登場人物とお金の流れを、1枚に描いておきます。

箱は6つ、矢印は5本です。矢印だけに頼らずに済むよう、文字でも書いておきます。

  • ①事業契約(自治体 → SPC)/②サービス対価(自治体 → SPC。お金を払うのは自治体側)

  • ③融資(金融機関 → SPC)と返済(SPC → 金融機関)。この2本で1組

  • ④出資(出資企業 → SPC)

  • ⑤業務委託(SPC → 設計・施工/運営)

読みどころは、運営を担う会社に届く矢印が⑤の業務委託だけである点です。事業契約とサービス対価のやり取りは、自治体とSPCの間で完結します。

ただし、ここには続きがあります。

PFIで整備される施設が住民の使う「公の施設」の場合、その管理には別に指定管理者の指定という手続きが要ります。SPCが指定を受けるのか、運営を担う会社が指定を受けるのかは、案件ごとに公告で定められます。つまり「運営側は自治体と何の関係も持たない」わけではありません。この指定という手続きそのものは、次の第4章で主役として扱います。この章では**「お金の契約の相手はSPC」**とだけ押さえてください。

なぜ、わざわざ新しい会社を作るのか

「元の企業がそのままやればいいのに」——そう思いますよね。理由はシンプルで、事業の安全性を高めるためです。

たとえば、チームに参加していた建設会社が、万一あとで倒産したとします。もしその建設会社が直接契約していたら、事業全体が止まってしまう。でも、契約の主体が独立したSPCになっていれば、問題のあった会社だけを差し替えて、事業そのものは続けられる。20年・25年という長い事業を、特定の一社の運命に左右されないようにする——そのための"防護壁"が、SPCなんです。

そして、新規参入者がよく不安がるのが「SPCに出資するお金が必要なの?」という点。ここは安心してください。SPCは、事業者として選ばれて初めて作る会社。応募の段階では、まだ存在していません。だから、応募するだけなら出資は不要です。この誤解ひとつで、公告を開いた瞬間に「うちには資本がない」と降りてしまう——この降り方は、実際に何度も起きています。降りる理由として、これは成立しません。

そのうえで、時系列だけは正確に持っておいてください。出資金を実際に払い込むのは、選ばれてSPCを設立するときです。応募の時点で現金は動きません。ただし構成員として応募するなら、出資予定額・出資比率を応募書類に書かせる案件、選定されたら出資する旨の誓約書を出させる案件があります。キャッシュが出るのは選定後、出資の意思決定は応募前——この2つはセットで覚えてください。「応募段階で負担はありません」とだけ社内に説明して優先交渉権者になり、そこから資本の話を始めると、決裁で必ず止まります。

運営専業の会社は、どの立場で入るのか

ここまで来れば、あなたの立ち位置は自分で決められます。上の図で、運営会社に届く矢印は⑤の業務委託だけでした。つまり運営を担う会社の入り方は、大きく2つに分かれます。

  • 構成員……SPCに④の出資をする立場。株主として長期の事業に腹をくくる代わりに、事業そのものの意思決定に関われる

  • 協力企業……出資はせず、⑤の業務委託だけを受ける立場。SPCの成立後に運営業務を受託する

  • 代表企業……チームの窓口役。代表企業も構成員の一人です。設計・施工の会社が務めるとは限らず、運営会社が代表企業になる構成もあります

大事な注意を3つ足します。

1つめ。この呼び方と定義は、募集要項の「応募者の構成」の項に必ず書いてあります。名称も「構成員/構成企業」「協力企業/協力会社/その他企業」と自治体で違い、出資の有無で切るところもあれば、応募者名簿への記載で切るところもあります。案件ごとに、その定義を読むのが先です。

2つめ。出資と業務受託は別の話です。出資も受託も両方やる構成員もいれば、出資だけの構成員もいます。構成員になれば運営業務が必ず取れる、ではありません。自社がどちらを狙うのかは、応募前に決めておいてください。

3つめ。協力企業も、応募書類に名称と担当業務を書かせる案件が多くあります。SPCができてから自由に加われる立場ではありません。

そして応募段階ではSPCがまだ存在しない以上、どちらの立場を選んでも、応募のテーブルには着ける。ここを取り違えて「うちは出資できないから無理だ」と降りてしまうのが、いちばんもったいない。

2つの立場の違いを、上の図の矢印に対応させて並べておきます。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

構成員協力企業
④出資するしない
契約の相手SPC(出資する。運営業務を受託するかは別に決まる)SPC(⑤の業務委託を受ける)
事業の意思決定株主として関われる関わらない。受託した業務の範囲で仕事をする
応募書類での扱い出資予定額・出資比率や誓約書を求められる案件がある名称と担当業務を書かせる案件が多い
背負うもの20年・25年の事業に株主として腹をくくる受託した業務の履行責任

この表の縦の並びが、そのまま「出資するかどうか」で何が変わるかの一覧です。変わるのは出資の有無・意思決定への関与・応募書類の書きぶりであって、契約の相手はどちらもSPCである点は動きません。ここが動かないことを押さえておくと、後の章で契約書や仕様書を読むときに迷いません。

そして、3つめの結論があることも書いておきます。今回は入らないという結論です。事業期間が20年あるのに20年ぶんの人員計画が引けないなら、そこは入らない。見送りも協力企業も、立派な結論です。20年の体制が引けないのに手を挙げて途中で降りるほうが、ずっと痛い。構成員・協力企業・見送りという3つの出口があること自体を、いま頭に入れておいてください。

チームの組み方そのもの(誰と組むか、役割分担をどう決めるか)はC7で扱います。

3つの手法を1枚に並べる

ここまでに出てきたPFI・DBOを、比較のために従来方式(分離発注)と並べます。手法そのものを覚える表ではなく、同じ問いを3つの手法に投げると答えがどう変わるかを見る表です。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

PFIDBO従来方式(分離発注)
資金を用意するのは誰か民間。民間がいったん出し、自治体が長期の分割で支払う自治体が調達する自治体
設計・施工の担い手民間(SPCから業務委託)民間(まとめて受託)設計会社と建設会社に分けて発注
運営の担い手民間。同じ契約の中に含まれる民間。同じ契約の中に含まれる別の事業者に別途発注
SPCの要否選定後に設立。契約・借入の主体になる借入の主体が要らないため、SPCは必須にならない。設立を求めるかは公告の応募者要件で決まる不要
契約期間の目安20年・25年といった長期運営期間として長期。基準はPFIの20年・25年に置く工程ごとの個別契約。設計・施工は単年〜数年
運営専業の会社が入る余地あり。構成員(出資する)/協力企業(受託のみ)の2通りあり。建設資金の調達負担はないが、応募者資格要件(実績・財務)はPFIと同等に厳しいことが多いあり。ただし運営の単独発注を待つ形になる

この表は上下2つのかたまりに分けて読みます。上から3行は「誰がやるか」——手法の骨格そのもので、ここを見れば手法の判別がつきます。下から3行は「入るとどうなるか」——期間の長さ、会社を作るかどうか、運営専業でも席があるかどうかです。

読み比べると、PFIとDBOの列がほとんど同じ文で埋まることが分かります。違うのは1行目と、その帰結である4行目だけ。資金の出どころが変わると、契約と借入の主体としてのSPCが要るかどうかが変わる——2つの手法の関係は、この連鎖として覚えるのが正確です。従来方式の列だけが縦にバラバラなのは、設計・施工・運営がそれぞれ別契約に切られているからです。まとめて長期で任せる、という前提そのものが無い。

新規参入者がつまずく4つの勘違い

ここまでの内容から、取り違えると提案の前提ごと崩れる点を4つ、修正の順番付きで並べておきます。1行目は、実際に何度も繰り返されている取り違えです。

同じ内容を表で見る(コピー・検索用)

よくある勘違いどこで詰まるか修正
「応募するのに出資金が要る」公告を見た瞬間に降りるSPCは選ばれてから作る会社。応募段階では存在しないので出資は不要
「PFIとDBOは別世界の制度」両方の公告を別々に勉強し直す骨格は同じ。違うのは資金を誰が用意するかの一点
「性能発注=細かいことは決まっていない」要求水準書を読み込まずに提案を書くゴール(機能・サービス水準)は明示されている。自由なのは到達方法だけ
「運営会社の契約相手は自治体だ」契約相手・支払元を読み違える運営会社の契約相手はSPC。ただし公の施設なら指定管理者の指定が別にあるので、誰が指定を受けるのかを公告で必ず見る

左から順に読むと、勘違い→詰まる場所→正しい理解、の順路になっています。とくに3行目と4行目は、提案書の前提を丸ごと間違える危険があります。読み飛ばさないでください。

性能発注も、長期での官民連携も、リスク分担の考え方も、ぜんぶ②の「活かす」エリアにもつながっている。森の全体を知るほど、自分が立つ場所の意味が、より深くわかってくるんです。

その②「活かす」エリア——指定管理者制度そのものの中身は、次の第4章で主役として扱います。

ここまでで、「つくる手法」の骨格は頭に入りました。資金を誰が用意するかでPFIとDBOが分かれること、その分かれ方の帰結として契約と借入の主体であるSPCが要るかどうかが決まること、そして運営を担う会社の契約相手は自治体ではなくSPCであること。この3つがつながって見えていれば、公告の1ページ目から事業の骨組みを組み立てられます。

ここで身につけたのは、契約とお金の向きから事業の形を読むという見方です。この見方は、つくる手法だけのものではありません。誰が誰と契約し、誰が誰に払うのか——次の第4章で扱う指定管理者制度も、まったく同じ問いで読み解けます。そのとき、この章のSPC図が下敷きになります。

第4章から第6章は、案件を1件、実際に判断するための章です。そこで扱う資料の上には、性能発注も、長期契約も、リスク分担も、ぜんぶ形を変えて出てきます。言葉の意味をもう一度調べる時間は要りません。読むことに集中できます。

なお、応募すると決めたあとの収支計画・資金計画の作り方はC3-06で扱います。

3行まとめ

  1. PFIとDBOの違いは「建設のお金を誰が用意するか」の一点。骨格はどちらも「設計・建設・運営をまとめて長期で民間に任せる」です。

  2. SPCは事業専用に作る会社で、事業の安全性を高める"防護壁"。運営会社の契約相手は自治体ではなくSPCです(公の施設なら、指定管理者の指定という別の手続きが重なります)。

  3. 応募するだけなら出資は不要。だから運営専業の会社も、構成員か協力企業かを選んでテーブルに着けます。

森の奥へ。でも、足取りは軽く。次はあなたが主役の②「活かす」エリアに入ります。

この章の学習を終えたら