
AIで指定管理事業計画書をつくってみた【中編:収支計画書と3つの設計図を全公開】
指定管理事業計画書づくりの中編。人員配置・自主事業・維持管理の設計図をすべて自分で作り、AIを「調べる助手」として使う全工程を公開。収支計画書まで一貫して人間がイニシアチブを握る理由と、NotebookLMの正しい使い方を前橋市の実践事例で解説します。
公開日2026/03/22
目次
指定管理事業者のみなさん、こんにちわ。 指定管理者制度AI編集長のヤマザキです。
前編では「仕込み」の話をしました。
公募資料を読み込ませて、行政の本音を掘り起こして、自主事業の収益設計をして——NotebookLMという「頭脳」に、素材を全部集めた。
あの工程で、全体の約4割が終わっていると書きました。
中編では、残り6割に入ります。
ここからが、本当の勝負です。
人員配置。 自主事業。 維持管理。 そして収支計画書。
審査員が「この会社、本気だな」と感じる提案書の「骨格」を、どう組み立てるか。
その全工程を、今回も包み隠さず公開します。
この記事でわかること
- 人員配置・自主事業・維持管理を自分で設計しながらAIを使う具体的な方法
- NotebookLMを「壁打ち相手」として使うと何がどう変わるか
- 収支計画書は人間がイニシアチブを握るべき理由と、AIの正しい使い方
- 「準備完了」の状態とは何か——後編への橋渡し
中編の全体像:やることは3+1
前編でNotebookLMに集めた素材をもとに、今回は3つの「設計図」を作ります。
| # | 作るもの | 主な作業 |
|---|---|---|
| 1 | 人員配置計画 | 組織図・待遇・シフト・年間人件費 |
| 2 | 自主事業計画 | プログラム設計・収益試算 |
| 3 | 維持管理計画 | 業務委託整理・年間カレンダー |
| + | 収支計画書 | 上3つを踏まえた総仕上げ |
全部、自分で設計します。AIは助手です。
「AIに作らせる」ではなく「自分が作る作業を、AIが猛烈にサポートする」——この違いが、中編のすべてです。
3つの設計図ができたら、全部NotebookLMにアップロードして、収支計画書で締める。 それが完了したら、いよいよ事業計画書本体——後編へ。
なぜ「自分で設計」にこだわるのか
一度、全部AIに任せてみたことがあります。
人件費の試算も、自主事業のプログラムも、維持管理の年間計画も——プロンプトを打って、出てきたものをそのまま使おうとした。
結果、こうなりました。
「この数字、合ってるのか?」——確認作業が、想像以上に大変。 正しいか間違いかを判断するために、結局たくさんの資料を読んで、自分で理解し直す必要がある。 自分でゼロから作るより、むしろ手間がかかる。
そして何より——人員配置も自主事業の収益試算も維持管理費も、そのまま収支計画書の数字に直結します。 ここがズレると、収支全体がズレる。 事業計画書の文章に多少の誤りがあっても審査への影響は限定的ですが、収支の数字が間違っていたらダメージが桁違いに大きい。
だから、設計は自分でやる。AIは助手として使う。
作ったら、AIに抜け漏れをチェックしてもらう。 それが正しい役割分担です。
STEP 6|人員配置計画をつくる
収支計画書の最大変数は、人件費
人員配置が固まらないと、収支の試算ができません。 だから真っ先に手をつけます。
設計の順番はこうです。
① 組織図を描く 館長→副館長→各担当(施設管理・自主事業・窓口)の階層構造を、自社の得意な形で設計します。 今回の前橋市では「プレイングマネージャー方式」を採用。 DXによる省力化で生まれた余力を、丸ごと高齢者サポートや専門指導に振り向ける設計にしました。
② 配置社員の待遇を決める 正社員・パート・業務委託の比率と給与水準を設定します。
③ 1日のローテーション、月間シフトを組む → 年間人件費へ積み上げる 開館から閉館まで、誰がどのポジションに入るかを時間軸で設計し、かつ、実際に月間シフトを組んでみます。
月間人件費 = 正社員給与 + パート時給×時間 + 社会保険料
年間人件費 = 月間人件費 × 12 + 賞与・一時金
ここでAIの出番
設計を進めていると、こういう疑問が必ず出てきます。
- 「最低配置人数の基準、仕様書に何て書いてあったっけ」
- 「夜間帯の警備は直営?委託?」
- 「有資格者の配置要件、もう一回確認したい」
これを全部NotebookLMに聞きます。
業務仕様書をもとに、以下を教えてください。
1. 職種別の最低配置人数の基準
2. 必須資格・有資格者の配置要件
3. 夜間・休日の警備体制に関する記載
しかもNotebookLMは出典を示してくれます。「業務仕様書○ページより」と教えてくれるので、気になった数字はすぐ原文を確認できる。 手元の資料をめくる作業が、ほぼゼロになります。
収支に関わる大切なことなので、細かく質問していきましょう。
ちょっとわかりにくかったり、間違えていることもごくたまにあります。 部下とか同僚と同じで、完璧はないと思って、健全に疑ってかかりましょう!
やりとりを終えて、設計が一通り終わったら、こう聞いて締めます。
私が作成した人員配置計画に、業務仕様書の要件と照らして
抜け漏れや不足はありますか?
→ 完成したら、NotebookLMにアップロード。
STEP 7|自主事業計画をつくる
「やりたいことリスト」では落ちる
自主事業計画で失敗する会社のパターンは決まっています。 「やりたいことリスト」を並べて終わり。
審査員が見たいのは**「なぜその事業か」の根拠と、「本当に収益が出るのか」の試算**です。
だから設計の順番はこうします。
① 自治体の方針・地域のニーズを自分で読み込む 前編でGeminiが出してくれた地域分析・行政KPIのレポートを、もう一度自分の目で読み直します。 「スポーツ実施率70%達成」「部活動の地域移行」——この文脈に刺さる事業は何か、自分の頭で考える。
② 自分たちができることを棚卸しする 実績・保有資格・講師ネットワーク——自社が本当に動かせるリソースを整理します。 「できること」と「できないこと」を正直に仕分けする作業です。
③ 諸室と教室の相性を確認する どの部屋でどの教室ができるか。 これを無視すると、提案が現実離れします。
ここでAIの出番
設計中に出てくる「調べること」を、NotebookLMに任せます。
- 「○○室って何平米だったっけ」
- 「自主事業で諸室を使うとき、指定管理者は自治体に利用料を払うの?」
- 「条例だと、営利利用の場合の利用料金は通常の何倍だっけ」
今まで都度いろんな資料をめくっていたこの作業が、一問一答で片付きます。
自主事業として○○室でヨガ教室を開催する場合、
指定管理者が市に支払う諸室利用料の計算方法を
条例・規則の記載をもとに教えてください。
収支の前提となる数字を、正確に・素早く・出典付きで引き出せる。 これが、NotebookLMを助手として使う最大のメリットです。
→ 完成したら、NotebookLMにアップロード。
STEP 8|維持管理計画をつくる
地味だけど、差がつくパート
維持管理計画は「仕様書に書いてあることをやります」と書くだけでは最低点。 仕様書の要件+自社ならではの付加価値を見せることが大事です。
設計の流れはシンプルです。
① 業務委託する項目と直営でやる項目を仕分けする 清掃・設備点検・警備——どこを外部に出して、どこを自社でやるかを決めます。
② 年間の点検・更新スケジュールを組む 月別カレンダー形式で落とし込むと、PowerPointの1スライドとして使えて視覚的な説得力が上がります。
ここでAIの出番
業務仕様書に記載されている維持管理業務を整理して、
以下の形式で出力してください。
1. 業務委託が想定される項目と頻度
2. 年間の法定点検・定期点検スケジュール(月別)
3. 仕様書で「指定管理者負担」と明記されている修繕範囲
→ 完成したら、NotebookLMにアップロード。
STEP 9|収支計画書をつくる
設計した3つが、そのまま数字になる
ここまでの3つの設計図——人員配置・自主事業・維持管理——は、全部収支計画書の数字に直結しています。
だから最初から「正確な設計図」を自分で作ることにこだわってきました。
収支計画書は、その集大成です。
【収入】
・指定管理料(上限額の90〜99%でセット)
・自主事業収入(STEP7で試算した数字)
・施設使用料収入
【支出】
・人件費(STEP6で積み上げた数字)
・維持管理費(STEP8で整理した業務委託費)
・自主事業原価(講師費・消耗品等)
・一般管理費・本社経費
【収支】
・営業収支=収入合計-支出合計
・修繕積立への繰入額
・市への施設使用料還元額
指定管理料の設定について
指定管理料は、上限額の90〜99%程度でセットするのが基本です。
行政はすでに予算を議会で通しています。 その予算内であれば「高すぎる」とは評価されない。 必要以上に安くする必要はありません。
特に前橋市は群馬県の県庁所在地。 財政規模も安定しており、むしろ安くしすぎると「本当にこの内容でできるのか」と疑われるリスクがあります。
安くできる余地があるなら、値下げではなく提案の充実に回す。 それが、審査員の評価を最大化する正しい使い方です。
最後にAIでダブルチェック
収支計画書が一通り完成したら、NotebookLMに聞きます。
私が作成した収支計画書について、
業務仕様書・募集要項の記載と照らして
計上漏れや前提のズレがある項目を指摘してください。
自分で作った数字を、AIが客観的にチェックする。 このワンクッションが、提出前の最後の砦になります。
→ 完成したら、NotebookLMにアップロード。
準備、完了。
ここまでで、NotebookLMには以下が全部入っています。
| カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| 公募資料 | 業務仕様書・募集要項・施設概要 |
| 自社情報 | 会社案内・実績・強み |
| 調査結果 | 地域分析・行政ニーズ・KPI |
| 設計図① | 人員配置計画・年間人件費 |
| 設計図② | 自主事業計画・収益試算 |
| 設計図③ | 維持管理計画・年間カレンダー |
| 収支計画書 | 収入・支出・収支の全体像 |
方針、ニーズ、予算、人員、管理、事業——すべての大前提が固まりました。
NotebookLMは今、あなたの会社のことを「社員と同レベル」で理解しています。
ここからが、本当のクライマックスです。
後編予告
いよいよ「事業計画書本体」を書きます。
- NotebookLMへどんな質問を投げて、どんな文章を引き出すか
- PowerPointへの落とし込み方と、スライド構成の全設計
- 審査員が「手を止める」表紙・理念・自主事業スライドの作り方
完成した事業計画書を先に見たい方は、👉 完成版の事業計画書はこちらから全文ダウンロードできます。 後編と見比べると、理解がさらに深まります。

指定管理者制度に携わる皆様の業務効率化と採択率向上をサポートする記事をお届けしています。
ヤマザキは2004年から大学で指定管理者制度を研究し、
2010年からの10年間は、指定管理/PFI/PPPのコンペや運営現場の最前線に立ち続けてきました。
その後はスタートアップとの協業や出資、ハッカソンも数多く主催。「現場」と「未来」双方の知見を活かした情報発信を行っています。
その経験をもとにした本サービス「指定管理者制度AI」では、実際にAIを活用した提案書・企画書作成サービスを展開。 豊富な採択事例データベースと高度な自然言語処理技術により、要点整理から文書構成の最適化まで包括的にサポートします。
自治体要件の読み取り、競合分析、予算計画の策定など、指定管理者応募に必要な業務を効率化し、 質の高い提案資料を短時間で作成できる専門AIツールを提供しています。