
【指定管理者・PFI事業者向け】AIでSNS発信はどう変わる?「告知して終わり」にしない施設広報超入門
AIでSNS発信はどう変わる?を指定管理者・PFI事業者向けに解説。施設のSNSはバズ狙いではなく、利用者に届けて行動につなげ、記録して次の提案の根拠にする業務です。誰に届けるか決める・施設の言葉を利用者の言葉に翻訳する・発信、反応、行動、成果の4段階で記録する、の原則+3ステップを、コピペで使えるプロンプト3本つきで公開。日時や料金をAIに創作させない事故チェック、個人情報と情報アクセスの公平性まで。施設広報のAI活用超入門です。
公開日2026/09/19
目次
指定管理者制度AI編集長のヤマザキです。
ある施設の広報担当者が、来月のイベントをSNSに投稿しました。
「○月○日、健康体操教室を開催します。定員20名。申込は窓口まで。」
3日後。
いいね、2件。
1件は同僚。もう1件は、たぶん館長。
「SNSって、本当に意味あるのかな……」
そう思いながら、次のイベント告知も同じフォーマットで作る。
指定管理の現場で、こんなことはないでしょうか。
でも、問題はフォロワーの少なさでも、担当者の文章力でもありません。
施設の「掲示」を、そのままSNSに持ってきていることです。
公共施設のSNSに必要なのは、バズではありません。
来てほしい人に情報が届き、行動につながること。 そして、その結果を次の運営改善と提案に使える形で残すことです。
この講座では前回、「調べた情報を会社の資産に変える」という話をしました。 第6回の今回は、集めて考えたことを外に出す番。「届ける」です。
やることは3つだけ。
誰に届けるか決める。 施設の言葉を、利用者の言葉に翻訳する。 そして、反応を記録する。
この3つを回せるようになると、SNSは単なる告知ツールではなく、日々の運営から「次の提案書の根拠」をつくる仕事に変わります。
この記事でわかること
- 施設のSNSが「片手間仕事」ではなく「実績になりうる業務」である理由
- 「エンゲージメント」という言葉の意味と、施設運営での捉え方
- ヤマザキ式・施設SNSの原則+3ステップ
- 事務的な告知文を「利用者の言葉」に翻訳するAIプロンプト
- 記録すべき4段階(発信量・反応・行動・成果)と、「全部をSNSのおかげにしない」誠実さ
- 公共施設ならではの注意点(個人情報・同意・情報アクセスの公平性)
まず前提:施設の広報は「実績になりうる業務」です
本題の前に、視点をひとつ変えてほしいことがあります。
施設のSNS運用を、「若手に任せる片手間仕事」だと思っていないでしょうか。
指定管理の現場では、広報・情報発信そのものが業務の一部として位置づけられている施設も少なくありません。
案件によっては、仕様書や提案要求事項で情報発信の充実が求められます。
そして発信の結果は——
- 利用者数・認知度という集客の成果につながり
- モニタリングや事業報告で説明する材料になり
- 次期公募の提案書で「数字で語れる広報実績」になりえます
つまりSNSは、告知の掲示板ではありません。 「広報実績を積み上げていく業務」として設計できるものです。
そう捉え直すと、やるべきことが変わってきます。
結論:原則ひとつ+3ステップで回す
いきなり結論です。
原則|バズではなく、利用者の行動をつくる
この原則の下に、3つのステップを回します。
「STEP1|誰に届けるか決める」 顔が浮かぶレベルまで、相手を具体化する。
「STEP2|施設の言葉を、利用者の言葉に翻訳する」 事務的な告知文を、相手の生活の言葉に変換する。ここでAIが効きます。
「STEP3|発信・反応・行動・成果を残す」 記録を、次の投稿と、報告・提案の材料にする。
冒頭の「いいね2件」の投稿が届かなかった理由は、この3つのどれもやっていなかったから。 掲示板の紙を、画面に貼っただけだったからです。
順番に見ていきましょう。
STEP1:誰に届けるか決める——「みなさん」に書いた投稿は誰にも届かない
まず、今回のキーワードを整理します。
SNSの世界では「エンゲージメント」という言葉がよく使われます。 マーケティング用語としては、いいね・コメント・シェア・保存・クリックなど、投稿に対する利用者の反応全般を指す言葉です。
この講座では、それを現場の言葉に置き換えて、こう考えてみましょう。
「施設と利用者のあいだに生まれた、接点の数」。
体操教室の投稿に「初心者でも参加できますか?」とコメントがつく。 投稿を見た人が、あとで見返すために保存する。 リンクを開いて、教室の詳細ページを読む。
どれも、施設と利用者の接点です。 数字の人気投票ではなく、来館に向かう途中の足あとだと捉えてください。
そして接点が生まれる投稿には、共通点があります。 読んだ人が「自分のことだ」と思えることです。
「みなさん、ぜひご参加ください」は、誰のことでもありません。 「最近、階段で息が切れる60代の方へ」は、その人に届きます。
だから最初にやるのは、投稿を書くことではなく、相手を決めること。
第2回で学んだ「依頼の4点セット」で、AIに手伝ってもらいます。
プロンプト①:施設の「発信方針シート」をつくる
【ゴール】
当施設のSNS発信の方針をつくりたい。
「誰に・何を・どんなトーンで」発信するかを整理してください。
【背景】
施設:【施設名・施設種別(例:市民体育館)】
所在地の特性:【例:住宅地、子育て世帯が多い、高齢化率が高い等】
主な事業・イベント:【例:健康体操教室、キッズスポーツ、貸館】
現状のSNS:【例:X運用中、フォロワー300、投稿は月4回の告知のみ】
【お願い】
1. この施設が発信を届けるべき利用者像を3タイプ挙げ、
それぞれ「生活の様子・施設に求めること・響く言葉」を整理してください
2. タイプごとに、投稿ネタの方向性を3つずつ提案してください
3. 施設アカウントとしてふさわしい発信トーン
(親しみやすさと公共性のバランス)を提案してください
【仕上がり】
表形式で。実在しない統計や数値は使わず、
提案はすべて「案」として示してください。出てきた利用者像は、あくまでAIの仮説です。 窓口で毎日利用者と接しているみなさんの実感で、必ず補正してください。
「うちの平日午前は圧倒的にシニア層だ」 「最近ベビーカーの来館が増えている」
その現場の実感こそ、AIには絶対に出せない情報です。
STEP2:施設の言葉を、利用者の言葉に翻訳する
相手が決まったら、投稿づくりです。
やることは、ゼロから書くことではありません。 手元の事務的な告知文を、利用者の生活の言葉に翻訳することです。
Before(施設の言葉)
○月○日(土)10時より、健康体操教室を開催します。定員20名。参加費500円。申込は窓口まで。
After(利用者の言葉・記載例)
最近、階段で息が切れませんか?🚶 土曜の朝、椅子に座ったままできる体操から始めてみませんか。 運動が苦手な方こそ大歓迎。終わったあとは皆さんおしゃべりして帰られます☕ ○月○日(土)10:00〜/参加費500円/窓口・お電話で受付中
同じ情報です。 でも、Beforeは「施設の都合」の順番で書かれ、Afterは「読む人の生活」から始まっています。
この翻訳作業こそ、AIの得意技です。
プロンプト②:告知文を「利用者の言葉」に翻訳する
【ゴール】
以下の告知情報を、SNS投稿文に変換してください。
【背景】
施設:【施設名】
届けたい相手:【プロンプト①で決めた利用者像を貼り付け】
発信トーン:【プロンプト①で決めたトーンを貼り付け】
【告知情報(この内容だけを使うこと)】
【イベント名・日時・場所・料金・定員・申込方法を貼り付け】
【お願い】
次の2パターンを作成してください。
1. 短文SNS用:短く読みやすく、冒頭1〜2文で「誰向けの何か」が
伝わるように。絵文字は1〜2個まで
2. 写真系SNS用:読みやすい短い段落で。絵文字は3個程度まで
ハッシュタグを付ける場合は、「地域名」「施設種別」「関心事」など、
利用者が施設を見つける手がかりになる言葉を数個選んでください。
【重要】
・日時・料金・定員・申込方法は、告知情報の記載どおりに。
1文字も変えず、創作・補完しないでください
・「先着」「残りわずか」など、告知情報にない煽り表現を
追加しないでください
・各案に「なぜこの書き出しにしたか」を一言添えてくださいポイントは「日時・料金を創作させない」の一文です。
第1回からお伝えしているとおり、AIはもっともらしい間違いを混ぜてきます。 一般企業の投稿なら誤字で済む話も、公共施設の料金・日時の誤りは苦情と信頼低下に直結する事故です。
だから投稿前に、第4回の「読み直し3回ルール」のミニ版を必ず回してください。
- 相手に届く言葉になっているか(伝わるか)
- 日時・料金・定員は原文と一致しているか(事故はないか)
- 公共施設として不適切な表現や、特定の利用者への配慮漏れはないか(公平か)
3つ目は施設SNSならではの観点なので、少し補足します。
公共施設の発信では、「誰に届けるか」だけでなく「誰が情報を受け取りにくいか」も考えたいところです。
たとえば、日時や申込方法を画像の中だけに書かない。画像を読み上げソフトで利用する方や、通信環境で画像が開けない方には届かないからです。重要情報は必ず本文にも書く。可能なSNSでは、画像の代替テキスト(画像の内容を説明する文章)も設定する——この代替テキストの下書きも、AIに手伝わせることができます。
集客と、情報アクセスの公平性。 両方に配慮できるのが、公共施設の広報のプロです。
STEP3:発信・反応・行動・成果を残す
さて、投稿して終わり——にしないのが、この講座です。
前回、「調べたら棚に置く」という話をしました。 発信も同じです。「発信したら、記録する」。
ここで大事な整理をひとつ。 投稿がいきなり来館につながるわけではありません。実際の流れは、
表示された → 興味を持った → 詳しく見た → 問い合わせた → 申し込んだ → 来館した
という段階を踏みます。 だから記録も、「いいね数」だけを追うのではなく、4段階に分けて残します。
「① 発信量」——何を、何回発信したか 「② 反応」——いいね・保存・シェア・コメント 「③ 行動」——リンククリック・問い合わせ・申込みなど、取得できる範囲で 「④ 成果」——参加者数・来館数など
そして、ここが誠実さの見せどころです。
全部をSNSのおかげにしない。
いいねが増えたからといって、来館が増えたとは限りません。 「投稿を見て30人来た」と計測できていないのに、AIにそう書かせてはいけない。
分けて記録するからこそ、「反応は増えたが行動につながっていない。次は申込方法の書き方を変えよう」という次の一手が見えてきます。
やることは月に1回、15分。メモをAIに整理させます。
プロンプト③:月次の記録を「学び」と「実績」に変換する
【ゴール】
当施設のSNS運用の月次振り返りを作成してください。
【背景】
以下は今月の記録です。
【投稿内容/反応(いいね・保存・コメント等)/行動(問い合わせ・
申込等、分かる範囲)/成果(参加者数等、分かる範囲)のメモを貼り付け】
【お願い】
1.「今月の学び」:発信量・反応・行動・成果の4段階で整理し、
どの段階で止まっているかの仮説と、来月試す投稿の型を
3つ提案してください
2.「実績サマリー」:この記録を、モニタリング報告や事業報告に
使える3行の文章に整理してください
【重要】
・記録にない数値・反応を創作しないでください
・SNSと来館の因果関係を、記録で確認できる範囲を超えて
断定しないでください(「〜の可能性がある」に留める)
・実績サマリーは事実の記述に徹し、誇張表現を使わないでくださいこの記録が12か月分たまると、何が起きるか。
「SNSでの情報発信を強化します」としか書けなかった提案書に、こう書けるようになります。
「告知中心だった発信を、利用者像を定めた内容に改善。反応数は月2件から20件に増加し、投稿経由とみられる問い合わせも発生」
大事なのは「20件」という数字そのものではありません。
課題があり、仮説を立て、施策を打ち、数字で確かめ、また改善した——。 このストーリーごと語れることが、「改善できる事業者」の証明になります。
第4回で学んだとおり、審査員に響くのは主張ではなく根拠です。 毎月15分の記録が、3年後・5年後の提案書の根拠になる。
いいね2件の月も、記録すれば資産です。
シリーズ恒例の注意——今回は「人」が関わります
重要なので、今回も確認です。 発信業務では、これまでの回と種類の違う注意が必要になります。
「利用者が写り込む」ことです。
- 写真の撮影・SNS掲載については、施設・自治体のルールと利用目的を確認し、必要な同意や掲示・告知などの手続きを行う。特にお子さんが写る場合は慎重に
- 利用者の氏名など、個人が特定できる情報を投稿に含めない
- 自治体側の広報ガイドラインやSNS運用ルールがある場合は、必ず従う
- 投稿文の生成にAIを使う際も、利用者の個人情報をプロンプトに貼らない
「AIに渡してよい情報か」の確認と、「世に出してよい情報か」の確認。 発信業務では、この2つのチェックが常にセットです。
まとめ
- 施設の広報は片手間仕事ではなく、「実績になりうる業務」
- エンゲージメントとは、施設と利用者のあいだに生まれた「接点」。来館に向かう途中の足あと
- 原則は「バズではなく、利用者の行動をつくる」
- 「STEP1」誰に届けるか決める——AIの仮説を、現場の実感で補正する
- 「STEP2」施設の言葉を利用者の言葉に翻訳する——日時・料金は創作させず、投稿前にミニ読み直し。情報アクセスの公平性も忘れずに
- 「STEP3」発信・反応・行動・成果の4段階で記録する——全部をSNSのおかげにしない誠実さが、かえって提案の説得力になる
最後に、今回いちばんお伝えしたかったことを。
AI時代の施設広報は、「投稿をうまく書く仕事」ではありません。 誰に届け、どんな反応があり、次に何を変えたのか。その一連の記録を残す仕事です。
これで、講座の流れがまたひとつ伸びました。
「調べる(第5回)→ 設計する(第3回)→ 書く(第2・3回)→ 読み直す(第4回)→ 届ける(第6回)」。
冒頭の「いいね2件」の担当者を思い出してください。
あの投稿がダメだったのではありません。 掲示板の紙を、掲示板の書き方のまま貼っていただけです。
相手を決めて、翻訳して、記録する。 AIが手伝えるいま、これは特別なスキルではなく、誰でも回せる習慣です。
まずは次のイベント告知をひとつ。 プロンプト②に貼って、「翻訳」から始めてみませんか。
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