
NTTが17万人分の業務をAI化─指定管理業界は大丈夫なのか?「AIリストラ」時代を生き抜く現場力
NTTが34万人の業務の半分をAI化。日本でも本格化する「AIリストラ」の波は指定管理業界にも確実に押し寄せています。窓口業務、予約受付、報告書作成…定型業務のAI代替が進む中、私たちはどう備えるべきか。過去のPC革命との決定的な違い、世界で起きている「静かなるリストラ」の実態、そして現場で今すぐできる3つの対策を解説。変化を恐れず、AIを味方につける働き方のヒントが満載です。
公開日2025/11/20
目次
指定管理事業者のみなさん、こんにちは。指定管理者制度AI編集長のヤマザキです。
朝、いつものようにニュースを見ていたら、目を疑うような見出しが飛び込んできました。 「NTT、34万人の業務の半分をAIに代替」。 思わず手が止まりました。 私たちの業界も、本当に他人事ではなくなってきた。 そう実感した瞬間です。
窓口業務、苦情対応、施設予約の受付、日報作成、利用者アンケートの集計……。 指定管理の現場で日々行われているこうした業務が、近い将来AIに置き換わる可能性は、もはや「いつか来る未来」ではなく「もう始まっている現在」なのかもしれません。
今日は、日本を代表する大企業で実際に起きている「AIによる業務代替」の現実を見つめながら、私たち指定管理事業者がこれからどう備えるべきか、一緒に考えていきたいと思います。
この記事でわかること
- NTTをはじめとする日本企業で実際に進む「AI業務代替」の最新事例
- 世界で起きている「AIリストラ」の実態と背景にある2つの側面
- 指定管理業界への影響と、現場で今できる具体的な対応策
- 過去の技術革新から学ぶ、変化の時代を生き抜くヒント
日本でついに始まった「AI業務代替元年」
NTTの衝撃発表が意味するもの
2025年、NTTが発表した計画は業界に衝撃を与えました。 全社員34万人の業務のうち、約半分に相当する17万人分の業務を、今後5年間でAIに代替させるというのです。
「クビにするわけではない」とNTTの島田明社長は説明しています。 人間は別の仕事に集中できるようにして、成長につなげるのだと。 確かに、業務の代替と人員削減は別物です。 でも、正直に言えば、現場で働く私たちからすれば「本当にそうなるのか?」という不安が先に立ちます。
実は、これは絵空事ではありません。 NTT東日本では既に、「電柱が傾いている」といった故障受付の電話対応がAIで自動化されており、コールセンター業務の2〜3割が実際にAIに置き換わっているのです。
他の大手企業も同じ道を歩んでいる
NTTだけではありません。 印刷大手のTOPPANは「5年で約4割」、日本生命は「3割程度」の業務をAIで代替できると発表しています。 これはもはや、日本の大企業における共通認識と言ってもいいでしょう。
私たち指定管理業界はどうでしょうか。 施設予約システムの自動応答、利用者からの問い合わせ対応、日々の業務報告書作成……。 考えてみれば、定型的な業務は決して少なくありません。
ある自治体のスポーツ施設では、既にLINEボットによる予約受付が稼働しています。 図書館では、貸出・返却の自動化が進んでいます。 美術館では、AIによる音声ガイドが人間のガイドと遜色ないレベルに達しつつあります。
私たちの業界も、確実にその波の中にいるのです。
世界で起きている「静かなるリストラ」
Amazonもマイクロソフトも動き始めた
日本だけではありません。世界中で「AI人材への入れ替え」が始まっています。
Amazonでは、コーポレート社員(管理部門・バックオフィス職)約35万人のうち、最大3万人を削減する計画が報じられました。 理由の一つとして挙げられたのが「生成AIと自動化への集中」です。
Microsoftも2023年以降、全社員の約8%に相当する計1万6000人をリストラしました。 一方で、AI分野では積極的に採用を続けています。 まさに「AI人材への入れ替え」が起きている象徴的な例です。
ITソフトやコンサルを提供する大手企業IBMでは、人事などバックオフィス職の3割、約7,800人分がAIに置き換えられるとして、採用を一部停止すると表明しました。
アメリカの求人数が4割減少している現実
より大きな視点で見ると、アメリカ全体の求人数は2022年のピーク時の約1,220万件から、直近では720万件へと約4割も減少しています。
もちろん、これはAIだけが理由ではありません。 高金利政策や経済の不透明性も影響しています。 しかし、生成AIの普及が求人減少の一因となっていることは、多くの専門家が認めるところです。
「本物のAI代替」と「便乗リストラ」
ここで重要なのは、今起きている「AIリストラ」には2つの側面があるということです。
一つは、本当にAIで不要になった業務を削減する**「本物のAI代替」。 もう一つは、業績不振や成果不足による人員整理を「AIによる効率化」という世論が受け入れやすい言い訳で誤魔化す「便乗リストラ」**です。
オックスフォード大学の研究者、ファビアン・ステファニー氏も「企業はAIがレイオフの良い言い訳になると考えている節がある」と指摘しています。
つまり、今起きているリストラのすべてがAIによる純粋な効率化とは限らない。 でも同時に、AIによってリストラが加速していることもまた、紛れもない事実なのです。
私たち指定管理業界はどうなるのか
過去の技術革新から学ぶこと
ここまで読んで、不安になった方も多いと思います。私自身もそうです。
でも、未来を考えるヒントは過去にあります。 1980年代から90年代にかけて起きた**「PC革命」**を覚えているでしょうか(若い方はご存じないかもしれませんが)。
当時、PCや表計算ソフトが普及し始めたことで、「事務職の仕事が消える」と大きく騒がれました。 手作業で集計していた業務が、Excelで一瞬でできるようになったのですから、当然です。
でも、結果的に大量失業は起きませんでした。 代わりに起きたのは、**「仕事の中身の変化」**でした。
文字を打つだけが仕事だったタイピストのような専門職は減りました。 しかし、多くの事務職は、PCを「使う側」へと役割を変えることで生き残ったのです。 今では、事務職員のほぼ全員がPCを使って仕事をしています。
今回の「AI革命」も同じ道をたどるのか?
結論から言えば、今回も「仕事が消える」というよりは、**「仕事の内容が変わる」**と捉えるのが妥当でしょう。
指定管理の現場で言えば、こんな変化が予想されます:
- 窓口業務:定型的な質問への対応はAIチャットボットが担当し、人間は複雑な相談や苦情対応に専念
- 施設予約:AI自動予約システムが24時間対応し、人間はイベント企画や利用促進の戦略立案に注力
- 日報・報告書作成:AIが基本フォーマットを自動生成し、人間は分析と改善提案に集中
- 清掃・点検業務:ロボットが定型作業を担当し、人間は品質管理と突発対応に専念
つまり、私たちは「AIに仕事を奪われる」のではなく、**「AIと協働する働き方」**にシフトしていくのです。
ただし、今回は「スピード」が違う
ここで厳しい現実をお伝えしなければなりません。 PC革命と今回のAI革命には、決定的な違いがあります。
それは、変化の**「スピード」**です。
PC革命のときは、人々が変化に適応するための時間が10年単位でありました。 しかし、今回のAI革命は、進化のスピードが凄まじい。 数年単位で、いや場合によっては数ヶ月単位で、求められるスキルが目まぐるしく変わっていきます。
ChatGPTが登場したのは2022年11月。 それからわずか2年余りで、生成AIは私たちの生活に深く入り込んできました。 この変化のスピードは、過去の技術革新とは比較になりません。
一部の仕事が廃れては、新しい仕事が生まれていく。 その変化のスピードに追いつけなければ、本当に職を失いかねないのです。
指定管理の現場で今できること
基本中の基本:AIに触れてみる
では、私たち指定管理事業者は、具体的に何をすればいいのでしょうか。
まず何より大切なのは、実際にAIに触れてみることです。ChatGPTでもGeminiでもClaude(今、私が使っているAIです)でも構いません。無料版で十分です。
「AIを使ってみる」というと大げさに聞こえますが、難しいことをする必要はありません。例えば:
- 利用者への案内文を書いてもらう
- イベント企画のアイデアを出してもらう
- 日報の下書きを作ってもらう
- 苦情対応のシミュレーションをしてもらう
- 月次報告書の構成案を考えてもらう
こうした日常業務にAIを組み込んでみることで、「AIができること」「AIが苦手なこと」が見えてきます。 そして何より、AIに対する漠然とした恐怖心が消えていきます。
「AIでは代替できない価値」を磨く
次に大切なのは、人間にしかできない価値を磨くことです。
指定管理の現場で、AIがどうしても代替できないものは何でしょうか。 私は、こう考えています:
- 感情に寄り添う対応:クレームや相談など、感情が絡む場面での共感力
- 創造的な企画力:地域の特性を活かした独自のイベントや事業の企画
- 臨機応変な判断:想定外のトラブルや緊急時の対応
- 関係構築力:自治体や地域団体、利用者との信頼関係づくり
- 改善提案力:現場の課題を発見し、解決策を提案する力
これらは、AIがいくら進化しても、簡単には代替できない「人間の強み」です。
私たちは、定型業務をAIに任せることで生まれた時間を、こうした「人間にしかできない価値」を高めることに使うべきなのです。
組織として準備しておくこと
個人レベルだけでなく、組織としても備えが必要です。
- AI活用の方針を明確にする:どの業務にAIを導入するか、職員はどう関わるか
- 職員研修を充実させる:AIの基本的な使い方、プロンプト作成のコツなど
- AI導入の実験を始める:小規模な業務から試験導入し、効果を検証
- 情報共有の仕組みをつくる:AI活用の成功事例や失敗談を組織内で共有
- キャリアパスを再設計する:AI時代に求められるスキルを明確にし、育成計画を立てる
特に重要なのは、**「失敗を恐れない文化」**をつくることです。 AI活用は試行錯誤の連続です。 完璧を求めず、小さく始めて、改善を重ねていく。そんな柔軟な組織風土が、変化の時代には不可欠です。
変化を「脅威」ではなく「機会」と捉える
指定管理業界にとってのチャンス
ここまで読んで、暗い気持ちになった方もいるかもしれません。 でも、私はむしろ、AIの登場は指定管理業界にとって大きなチャンスだと考えています。
なぜか。
指定管理業界は長年、「人手不足」と「予算制約」という2つの課題に悩まされてきました。 特に、少子高齢化が進む地方の施設では、優秀な人材の確保が年々難しくなっています。
AIは、この構造的な問題を解決する可能性を秘めています。 定型業務をAIが担うことで、限られた人材を「本当に人間がやるべき仕事」に集中させられる。結果として、サービスの質を落とさずに、むしろ向上させることができるのです。
例えば、ある公民館では、AIチャットボットを導入したことで、職員が窓口対応に割く時間が3割減少しました。 その時間を使って、地域の高齢者向けの新しい講座を企画したところ、利用者数が前年比で20%増加したそうです。
「仕事が変わり続けることが当たり前」の時代へ
最後に、最も大切なことをお伝えします。
私たちは、今の仕事やスキルに固執するのではなく、「仕事は変わり続けるのが当たり前」という現実に慣れる必要があります。
これは、決して楽な道のりではありません。 40代、50代の私たちにとって、新しいことを学び続けるのは、正直しんどいこともあります。
でも、考えてみてください。 私たちは、これまでも変化に適応してきたじゃないですか。
紙の台帳から電子台帳へ。 手書きの報告書からWordやExcelへ。 電話での予約受付からWeb予約システムへ。 私たちは、その都度「もう覚えられない」と思いながらも、なんだかんだ乗り越えてきました。
今回も同じです。 AIという新しい道具が登場しただけ。 使い方を覚えて、うまく付き合っていけばいいんです。
まとめ:未来は私たちの手の中にある
これだけは押さえておきたい5つのポイント
- 日本でもAI業務代替が本格化:NTTをはじめ大企業が数年で業務の3〜5割をAI化する計画
- 世界的なトレンド:米国では求人数が4割減少、「AI人材への入れ替え」が加速
- 過去の教訓:PC革命では「仕事が消える」のではなく「仕事の内容が変わった」
- 今回の違い:変化のスピードが圧倒的に速く、数年単位で適応が必要
- 生き残る鍵:AIに触れ、使いこなし、人間にしかできない価値を磨く
私からあなたへ
長い文章を最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
不安な気持ち、よくわかります。私も同じです。 でも同時に、私はワクワクもしているんです。
なぜなら、AIという強力な道具を手に入れた私たちは、これまでできなかったことができるようになるから。 もっと利用者に喜んでもらえるサービスを提供できるようになるから。もっと地域に貢献できるようになるから。
変化は確かに大変です。 でも、変化は成長のチャンスでもあります。
大切なのは、恐れて立ち止まるのではなく、一歩ずつ前に進むこと。 今日、この記事を読んだあなたは、もう一歩を踏み出しています。
明日、ChatGPTを開いてみてください。「こんにちは」と打ち込んでみてください。 それだけで十分です。 そこから、あなたの新しい物語が始まります。
私たち指定管理事業者は、これまでも地域の人々の暮らしを支えてきました。 AIという新しい仲間を得て、これからもその使命を果たしていきましょう。
未来は、私たちの手の中にあります。
指定管理者制度AI編集長
ヤマザキ
本記事は、日本経済新聞の記事を参考に、指定管理業界向けに再構成したものです。記事中の企業データや統計は2025年初頭時点の公開情報に基づいています。

指定管理者制度に携わる皆様の業務効率化と採択率向上をサポートする記事をお届けしています。
ヤマザキは2004年から大学で指定管理者制度を研究し、
2010年からの10年間は、指定管理/PFI/PPPのコンペや運営現場の最前線に立ち続けてきました。
その後はスタートアップとの協業や出資、ハッカソンも数多く主催。「現場」と「未来」双方の知見を活かした情報発信を行っています。
その経験をもとにした本サービス「指定管理者制度AI」では、実際にAIを活用した提案書・企画書作成サービスを展開。 豊富な採択事例データベースと高度な自然言語処理技術により、要点整理から文書構成の最適化まで包括的にサポートします。
自治体要件の読み取り、競合分析、予算計画の策定など、指定管理者応募に必要な業務を効率化し、 質の高い提案資料を短時間で作成できる専門AIツールを提供しています。